WordPressの後継として、Cloudflareが作ったEmDash(エムダッシュ)という新しいCMSが話題になっています。今のサイトはこのままで大丈夫なのか、これから作るならどっちなのか。ニュースを見るたびに少しそわそわしている人もいるはずです。
個人的には今のWordPressで困っていないなら、急いで乗り換える理由はあまりないと思っています。EmDashはプラグインに渡す権限をサイトの持ち主が決める作りなので、それを判断できる人や開発できる人がそばにいるかで向き不向きがはっきり分かれます。比べてみると、決め手は機能の差より誰がサイトの面倒を見続けるかのほうでした。
この記事でわかること
- EmDashとは何か、WordPressとのいちばんの違い
- できること・費用・向いているサイトの比較
- どちらにするかの決め方
- WordPressからEmDashに乗り換える手順
WordPressは続けてOK!EmDashは作る人がいる新しいサイト向け
CMS(コンテンツ管理システム)とは、記事やページを管理画面から追加・更新できる仕組みのことです。WordPressもEmDashも無料で使えるCMSですが、作りも得意な場面もけっこう違います。
| 気になること | 答え(2026年11月3日時点) |
|---|---|
| EmDashはWordPressの代わりになる? | ブログや会社のサイトなら作れます。ただプラグインやテーマの数はWordPressにまだ遠く及びません |
| 今のWordPressは乗り換えるべき? | 困っていなければ急がなくてOK。乗り換えるとデザインと機能の作り直しが必要です |
| EmDashが向いているのは? | 新しく作るサイトで、AstroやTypeScriptを扱える人が作って直せる場合 |
| どちらも無料? | ソフトはどちらも無料。お金がかかるのはサーバーと、作る人・直す人の手間です |
EmDashとは?
EmDashとは、Cloudflareが2026年4月1日に発表したオープンソースのCMSです。Astro(Webサイトを作るためのJavaScriptの仕組み)とTypeScriptで書かれていて、ライセンスはMITです。2026年9月28日には安定版の1.0が公開され、個人のブログから大きなサイトまで使える状態になったと公式ブログで説明されています。
WordPressのコードは使っていませんが、管理画面で記事やページ、メディア、メニュー、カテゴリーを扱えるところはWordPressに近いですね。動かす場所はCloudflareのサーバーレス環境(Workers)かNode.jsが動くサーバーで、公式は「Cloudflareでいちばんよく動くが、Cloudflareに縛られない」としています。CloudflareのブログもEmDashに移ったそうです。
ちなみにWordPressの共同創業者のMatt Mullenwegさんは「EmDashはCloudflareのサービスを売るために作られたと思う」と述べたと報じられています。製品そのものは評価しつつ、後継と呼ぶならもっと開かれているべきという立場ですね。WordPressキラーなんて言われ方もしていますが、作った側とWordPress側で見方が分かれているのが今の段階かなと思います。
いちばんの違いはプラグインにどこまで任せるか
EmDashとWordPressのいちばん大きな違いは、プラグイン(機能を足すための追加ソフト)の扱いだと思います。WordPressのプラグインはサイトの中で動くので、データベースやファイルに広く触れられます。Cloudflareは発表の中で、ここをWordPressの安全面の大きな課題として挙げています。
EmDashのプラグインは1つずつ隔てられた場所(サンドボックス)で動きます。コンテンツを読む、メールを送るといった使いたい権限をプラグインが先に宣言して、サイトの持ち主はそれを見てから入れるかどうかを決める仕組みです。外部への通信も許可したものしかできません。

とはいえ、これで安全の判断がいらなくなるわけではありません。どのプラグインにどの権限を渡すかを決めるのは、EmDashでもやっぱりサイトの持ち主です。入れたら何でもできる状態から渡した範囲だけできる状態に変わるので、権限を見て判断できる人がいるほどこの仕組みが生きてきます。
EmDashとWordPressでできることを比べる
サイトを作って更新していくうえで気になるところを表にしてみました。
| 比べること | WordPress | EmDash |
|---|---|---|
| 歴史 | 20年以上続くCMS(最新は2026年10月28日の7.1.4) | 2026年4月に発表、9月に1.0 |
| 管理画面 | 記事・固定ページ・メディア・メニューなど。日本語で使える | 記事・ページ・メディア・メニュー・カテゴリーなど。予約公開や版の履歴もある |
| プラグイン | 公式ディレクトリに7万7千以上の無料プラグイン | 専用の登録場所ができたばかりで、数はまだ少ない |
| 動かす場所 | PHPとMySQL(またはMariaDB)が動くサーバー | CloudflareのWorkers、またはNode.jsが動くサーバー |
| 作る・直すのに使う技術 | PHP、テーマ、プラグイン | Astro、TypeScript |
| ログイン | IDとパスワードが基本 | パスキー(指紋や顔認証など)が基本 |
| AIとの連携 | プラグインなどで足す | MCPサーバーとCLI(コマンド)を最初から備える |
| ライセンス | GPL | MIT |
数字でいちばん差が大きいのはプラグインです。EmDashの公式ブログでも、プラグインの数がWordPressに近づくまでには長い時間がかかると書かれています。予約フォームや会員機能、ネットショップのようにプラグインを入れれば済むことが多いサイトほど、今はWordPressのほうがラクだと思います。
もう1つ気になるのが日本語の情報です。WordPressは日本語の解説や相談先がたくさんありますが、EmDashは公式の情報が英語中心です。管理画面が日本語で使えるかも、今回は確かめられませんでした。困ったときに日本語で調べられるかどうかは、Web担当がいない会社ほど大事になってきます。
EmDashとWordPressの費用は?
WordPressもEmDashもソフトそのものは無料です。お金がかかるのはサーバーなどの動かす場所と、作る人・直す人・更新する人の手間ですね。
WordPressの推奨環境はPHP 8.3以上とMySQL 8.0以上(またはMariaDB 10.11以上)で、レンタルサーバーで動かすのが一般的です。EmDashはCloudflareに無料でデプロイ(公開)できると案内されていますが、アクセス数や使う機能によっては有料プランが必要になるかもしれません。始める前にCloudflareの料金ページを一度のぞいておくと安心です。
正直なところ、差が出やすいのはサーバー代より人の手間のほうだと思います。WordPressならテーマやプラグインを組み合わせて作れることが多いのに対して、EmDashでは足りない機能をTypeScriptで作る場面が出てきます。その作業を誰がするのか、外に頼むならいくらかかるのかまで含めて比べてみてください。
向いているサイト・向いていないサイト
サイトの種類ごとにざっくり分けると、こんな感じです。
| サイトの種類 | 向いているほう | 理由 |
|---|---|---|
| すでにWordPressで動いていて、困っていない | WordPress | 乗り換えると作り直しの手間がかかる |
| 予約・会員・ネットショップなどをプラグインで足したい | WordPress | 使えるプラグインの数が大きく違う |
| 社内に更新担当はいるが、開発できる人はいない | WordPress | 日本語の情報と相談先が多い |
| これから作るブログや会社のサイトで、作る人がAstroやTypeScriptを使える | EmDash | 新しい仕組みとプラグインの安全な作りを生かせる |
| すでにCloudflareを使っていて、サーバーの管理を減らしたい | EmDash | Workersで動かせる |
| AIのエージェントから記事の下書きや更新をしたい | EmDash(またはWordPressに機能を足す) | MCPサーバーを最初から備える |
決め方は更新する人と直す人が誰か
迷ったときは機能の表より先に、ふだん更新する人と何かあったときに直す人を書き出してみてください。CMS選びは仕組みの新しさより、続けて面倒を見られる人がいるかで決まることが多いからです。

たとえば更新はお店の人、直すのは近くの制作会社という体制なら、その制作会社がEmDashを扱えるかが決め手になります。どんなに安全な仕組みでも直せる人がいなければ、ちょっとした表示崩れの修正で止まってしまいますよね。逆に自分たちで開発できる人がいて、これから新しくサイトを作るなら、EmDashを試してみるのはアリだと思います。
WordPressからEmDashに乗り換える手順
WordPressからEmDashに乗り換えるなら、今のサイトを止めずに進めるのがポイントです。EmDashにはWordPressの書き出しファイル(WXR)やREST API、WordPress.comから記事・ページ・メディア・カテゴリーを取り込む機能があります。ただテーマ(デザイン)やプラグインの機能はそのまま移らないので、そこは作り直しになります。
- 今のサイトを控える:WordPressのデータとファイルをバックアップして、ページのURLの一覧も取っておく。
- 使っている機能を書き出す:お問い合わせフォームや予約、SEOの設定など、プラグインで足している機能を一覧にして、EmDashでの代わりを考える。
- EmDashで別に作る:記事を取り込んで、デザインと機能を作り直す。今のWordPressは公開したままにしておく。
- URLと表示を確かめてから切り替える:同じURLで開けるか、開けないページを新しいURLへ転送できるかを確かめる。

切り替えたあとも元のWordPressはしばらく消さずに残しておくと、何かあったときに戻せます。新しいサイトが動いたら終わりではなく、お問い合わせが前と同じように届くところまで確かめて完了と考えておくと安心です。
小さな会社・個人のサイトならどっち?
社内に開発できる人がいない会社や個人のサイトなら、今はWordPressのままで問題ないと思います。EmDashのプラグインの仕組みはよくできていますが、プラグインの数や日本語の情報、直せる人の多さではまだWordPressに分があります。
それより効果が大きいのは、たぶん今のWordPressを安全に保つことのほうです。本体とプラグインの更新を続けて、使っていないプラグインを消しておくだけでも心配の種はかなり減ります。更新や修正を自分で続けるのが難しい場合は、更新代行も含めてホームページ修正・保守からお気軽にご相談ください。
まとめ
EmDashはCloudflareが2026年4月に発表し、9月に1.0になった新しいCMSです。プラグインを隔てられた場所で動かす作りがWordPressとのいちばんの違いで、これから作るサイトに開発できる人がいるなら検討してみる価値はあると思います。今のWordPressで困っていなければ、乗り換えより先に本体とプラグインの更新を続けるほうを優先してみてください。
新しいCMSはこれからも出てくると思いますが、最後に大事になるのは誰が面倒を見続けるかです。EmDashはまだ動きの早い段階なので、気になる方は公式ブログの更新をしばらく追ってみるのもおもしろいですよ。



